スターター(種)について
サワードウブレッドを作るために、まずは水と小麦粉を発酵させてスターター(種)を作る必要があります。スターターが完成するまでは約1週間弱。このスターターがパンの膨らみや風味を左右するキーポイントとなるので、美味しいサワードウブレッドを焼くためには、元気なスターターを育てるのがポイントです。
最も手っ取り早い方法としては、既にサワードウブレッドを家で焼いている知人や近所のベーカリーで分けてもらう(購入する)という手段もあります。
スターターの種類
名前 | 使用する粉 | 酸味 | 発酵の早さ |
---|---|---|---|
ホワイトサワー種 | 強力粉のスターター | ★★★ | ★★★ |
ブラウンサワー種 | 全粒強力粉のスターター | ★★★★ | ★★★★ |
ライサワー種 | ライ麦粉のスターター | ★★★★★ | ★★★★★ |
スイートサワー種 | 砂糖を加えた甘いスターター | ★★ | ★★ |
固形サワー種 | 加水45~50%程度の硬いスターター | ★★ | ★ |
※酸味の強さは、環境温度や発酵時間、フィーディングの頻度等によって変わります。
スターターの作り方
◆必要なもの
・容器(500ml-800ml程度) 2個 ※種保管用
・コンテナ 1個 ※粉ミックス用
・スプーンまたはシリコンスパチュラ 1本
・強力粉 200g
・全粒粉 200g
・砂糖 5~20g
・ぬるま湯(約30℃)
※全粒粉ではなく、全粒ライ麦粉やスペルト粉でもOKです。また、石挽きやオーガニックのものの方が粉に栄養があるため菌が育ちやすいです。
◆工程
①使う容器やスプーンは雑菌繁殖を防ぐため、あらかじめ煮沸消毒して冷ましておく。
②強力粉と全粒粉を同じコンテナにいれてよく混ぜる。

③ぬるま湯50gと②の粉50gと砂糖5gを容器に入れ、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜたらラップをして暖かい場所(24~28℃前後)に置く。
1日目



ゴム等で印をつけておくとどのくらい膨らんだかわかりやすいです
④2~3日後、香りに酸味がでてスタート位置から約2倍のボリュームがでてきたら、25gを別の容器に移し、ぬるま湯50gと②の粉50gを加えて混ぜる(※この作業をリフレッシュと呼びます)。
2日目(20時間後)



⑤引き続き暖かい場所に置き、24時間後②と同様の方法で25gを別の容器に移して、ぬるま湯50gと②の粉50gを加えて混ぜる。その後4~7日間同様の作業を繰り返す。
粉と水が分離して水っぽい感じになり、元気がなさそうな様子なら、リフレッシュの際に砂糖5gも加えます。この段階ではニオイも発生しますが大丈夫です。
色が明らかに変であったり腐敗臭がする場合は雑菌が繁殖している可能性もあるのでよく観察してみて、ダメそうな場合は(残念ながら・・)もう一度やり直しです。
3日目



粉の種類によってはかなりニオイがきついです。
⑥スターターが4~8時間で2~3倍に膨らみ、ボリュームアップの頂点に達するようになれば完成。そのままパン生地に使うことができますが、すぐに使わない場合は一旦冷蔵庫に入れて保管します。
私は、より安定した状態のスターターをパン生地に使いたいので、一旦冷蔵庫で落ち着かせた後に1~2回リフレッシュしてからパンを作るようにしています。
これは味や膨らみ具合の好みの問題ですが、この段階にきたら大抵私は強力粉のみでリフレッシュします。

少量取り出して水に落としてみてください。

ここでプカプカ浮いていたら種がピーク(アクティブ)の状態で、パンの生地に混ぜてパン作りをスタートできるタイミングです。
ちなみに、私の家の冷蔵庫の上はちょうど26℃前後なので、そこが酵母を育てるスペースとなっています。
キープ(保管)の仕方
【1】種のフィーディング方法
種と水と粉を混ぜてフィーディングをします。
おすすめの割合は、
スターター:水:粉
=1:3:3=15g:45g:45g
または、
=1:4:4:=10g:40g:40g
割合はあくまでも目安なので、あまり神経質にならなくても大丈夫です。
2~3日に1回以上のペースでフィーディングしている場合は、1:2:2でもOKです。
※スターターの割合が少なくなるほど活性のスピードはゆっくりになりますが、膨らみが大きくなり、活性が下がるスピードも緩やかになります。逆に、スターターの割合が多くなるほど活性のスピードは上がるものの、下がるスピードも早くなります。
活性がピークに達したら冷蔵庫にいれて保管します。
常温保管も可能ですが、1日に2回程度フィーディングする必要があるので、しばらく焼く予定がないときは冷蔵保管がおすすめです。
【2】本種としてパン生地に使うとき
1.スターターをフィーディングする
(※種の状態にもよりますが、前回のフィーディングからあまり時間が空いていなければ(目安としては2日以上)、スキップして本種作りに移ってもOKです。)
↓4~6時間(その後すぐに本種作りに入らない場合は冷蔵庫へ)
2.本種作り
↓4~6時間
3.生地作り
(1)スターターをフィーディングする
パンの本種を作る前、前回のフィーディングから2~3日以上間が空いている時は、少なくとも1回はスターターをフィーディングしておきます。
長期間スターターをフィーディングしていない場合は、2~3回以上フィーディングするとより発酵が安定し、膨らみや風味がよくなります。
本種作りにはいるタイミングの理想は、スターターが最もアクティブになった(ピークに達した)時ですが、スケジュールの関係ですぐに作るのが難しい場合は、スターターがピークに達したら一旦冷蔵庫にいれて、なるべく24時間以内に(なるべく早いタイミングで)本種作りにはいります。
(2)活性化したスターターを使って本種を作る
本種の作り方は、種のフィーディングと同じです。パンの生地の仕込みに必要な本種の分量より多めに作ると、余った分は再度フィーディングして次にパンを焼く時の種として使えます。
例)本種を80g作りたい時
スターター:水:粉 =1:3:3=15g:45g:45g
→この場合、合計で105gになるので、そのうち80gはパンの本種として使い、残りの25gは再度フィードして継いでいきます。


【3】1週間以上パンを焼かないとき
冷蔵庫で保管し、2~3日毎に1回程度フィーディングしてなるべく酵母の活性を落とさないようにします。
◆活性化(ピークになるタイミング)を早めたい・遅らせたい場合
私の種は、スターター:水:粉=1:2:2でリフレッシュした場合、室温23℃程度で約5時間でピークを迎えます。
発酵を早めたい(強くしたい)場合は、砂糖をいれたり、全粒粉を混ぜたりします。
逆に遅らせたい場合は、塩をいれたり、リフレッシュの割合をスターター:水:粉=1:4:6やスターター:水:粉=1:3:3で調整します。(粉の割合が多くなるほど発酵はゆっくりになります)
★TIPS(種の酸味や膨らみの調整)
酸味を少し和らげたい、またはスターターの膨らみを良くしたいという場合は、粉の割合を少し多め(=水を少なめ)にしてフィーディングするのがおすすめです。
例)種をやや硬めにするとき
粉:水=1:0.8~0.9=50g:40~50g
また、完成したスターターをフィーディングして27~28℃以上で発酵させるとピリッとした酸味が強くなってくるので、まろやかな風味にしたい場合は26℃以下をキープするようにします。
応用スターター
1.全粒粉・ライスターター
全粒粉・ライ麦・スペルト粉で作るスターターです。
パンの風味が変わります。
フィーディングの際に粉を置き換えて変換することも可能です。
目安として2~3回以上フィーディングすると、スターター内の微生物の支配環境が変わり、違いが感じられるようになると思います。

2.スイートスターター
砂糖を加えたスターターです。
砂糖により酸味が抑えられるので、サワードウ特有の酸味を抑えたい時に使えます。
発酵はゆっくりになりますが、膨らみも良いので、ブリオッシュのようなふわふわのパンに向いています。
具体的な作り方についてはこちらの記事をご覧ください。
3.固形スターター
加水40~50%程度の硬いスターターです。
水分が少ない分、発酵はゆっくりかつ酸味は控えめで、よく捏ねて膨らませるパネットーネやブリオッシュ、食パンに向いています。
