粉の選び方
サワードウブレッドの主な材料である「粉」は、食感・風味・発酵のスピード・作業性(扱いやすさ)を左右するとても重要なポイントです。
この記事では、サワードウ作りに使われる代表的な粉とその特徴、たんぱく質含有量の目安、注意点、吸水のコツなどをまとめました。
1.小麦粉
特徴
- グルテン含有量が高く、しっかり膨らむ
- 扱いやすく、粉ブレンドのベースに最適
- 味はおだやかで、どんな材料とも相性が良い
タンパク質含有量の目安:11.0〜13.5%
吸水性:★★★☆☆(標準)
→ 加水率 70〜75%程度が目安
メモ
- 銘柄によって吸水性・発酵力が異なるため、使い慣れた粉をリピートすると安定しやすいです。
- オーガニックの粉はより豊かな栄養と風味を持ちますが、精製度や製粉所によって吸水性や膨らみに差がでやすいです。
- 石臼挽きの粉は、粉を熱で劣化させずに挽くため、香り高く栄養も残る一方、ふすまや胚芽の粒子も含まれるため、グルテンの結合が弱く膨らみにくい傾向にあります。
2.強力全粒粉
特徴
- 小麦を外皮・胚芽ごと挽いた粉で、香ばしく栄養価が高い
- 繊維質が多く吸水力が高い
- グルテン形成が弱く、膨らみはやや控えめ
タンパク質含有量の目安:12〜14%(ただし網目は弱め)
吸水性:★★★★☆
→ 加水率は+5〜10%(例:75〜80%)を目安に調整
メモ
- 水分をたっぷり吸うため、生地がベタつきやすいです。
- 単体100%で焼くと密度のあるパンになるため、ふっくらしたパンにしたい時は30〜50%までのブレンドがおすすめです。
3.ライ麦粉
特徴
- グルテンをほとんど含まず、独特の粘りと酸味をもつ
- 酸との相性が良く、スターター用の粉としても広く使われる(ライサワー種)
- サワードウ独特の酸味を活かしたいときに活躍
タンパク質含有量の目安:6〜9%(グルテン形成力は弱い)
吸水性:★★★★☆
→ 加水率は+5〜8%が目安
メモ
- ライ麦は「グルテンが弱い・酵素活性が高い・酸性環境で安定しやすいという特徴」があるため、ライ麦粉の配合が多いパンと焼く時はライ麦由来のデンプンや糖を効率よく分解できるライサワー種を使うと発酵の安定につながります。
- ライ麦生地はグルテンではなく ペントザンとデンプンの粘りで気泡を保持するため、ライサワー種の乳酸菌はこのような「粘性のある発酵生地」の環境でガスを保持することができます。
- ライ麦はグルテンをほとんど形成しないため、*酵素による「生地の崩れ」が起きやすいです(特にアミラーゼによるデンプン分解)ライサワー種は高い酸性度(pH4以下)を持ち、これが酵素の働きを抑制して生地の構造を保ち、安定した膨らみをもたらします。
4.スペルト小麦粉
特徴
- 古代小麦の一種で、ナッツのような風味がある
- グルテンはあるが質が柔らかく壊れやすい
- 栄養価が高く、消化にもやさしいとされる
タンパク質含有量の目安:11〜14%(質は繊細)
吸水性:★★★☆☆
→ 加水率:70〜75%前後(控えめに始める)
メモ
- グルテンが壊れやすいため、オートリーズやストレッチ&フォールドを短めに調整します。
- 混ぜすぎ、こねすぎに注意します。
【まとめ表】比較早見表
粉の種類 | タンパク質量 | 吸水性 | 風味 | グルテン形成力 | おすすめ用途 |
---|---|---|---|---|---|
強力粉 | 11〜13.5% | ★★★☆☆ | ◯ | ◎ | ベース粉に最適 |
強力全粒粉 | 12〜14% | ★★★★☆ | ◎ | △ | 香りづけ・栄養強化 |
ライ麦粉 | 6〜9% | ★★★★☆ | ◎ | × | 酸味や重さを出したい時・スターター |
スペルト粉 | 11〜14% | ★★★☆☆ | ◎ | △ | 香りづけ・栄養強化 |